第33章 推理狂想曲
「―――”羅生門”!」
瞬間、芥川の異能力である黒獣が、錆びれた扉をぶち壊した。
華麗に吹っ飛んで行った扉を見ながら、なまえと敦はぽかんと口を開けている。
「おい貴様!!なまえさんの呼び掛けに二度も応じぬなど無礼が過ぎるぞ!八つ裂きにされたいか!」
「――ひぃい!?何事であるか!?」
扉の向こうには、机に向かって座っているエドガー・アラン・ポオの姿が在った。ひしゃげて飛んで行った扉に大層驚きながら、相棒のアライグマを抱えながら慌てている。
『ちょっと龍之介!ダメでしょう!私達はポオさんに頼みごとをしにきたんだよ!?扉ぶち壊してどうするの!?』
「…ですが!!なまえさんの手を煩わせる者を許す訳には――」
『ポオさん、すみません。私の部下が、ご無礼を……』
「あ、貴女は、探偵社の……乱歩君のご友人…」
ポオは少しだけ安堵したように、頭を下げるなまえを見た。
『突然申し訳ありません。ポオさんに頼みがあって、乱歩さんから居場所を聞いてきました』
「吾輩に頼み…?」
心底不思議そうに頸を傾げるポオに、なまえは続けた。
『先の共喰いの件で、乱歩さんの為に書いた本に、私達を入れてください』
なまえの言葉に、ポオは一瞬の間を置いて、驚いたように口を開く。
「ふぁ!?!?自ら本に入りたいなど……それは吾輩の異能力を知ってのことであるか!?」
『はい。勿論存じ上げております』
ぽかん、と口を開けて驚いているポオに向かって、芥川が続く。
「何を呆けている!さっさと我々を其の本の中とやらへ案内せよ!」
「うぅむ………まあ、乱歩君のご友人の頼みとあらば……」
あまり気は進まないようだけれど、ポオはごそごそと机の抽斗から、一冊の本を取り出した。