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青 い 花 【文豪ストレイドッグス】

第3章 いつか海の見える部屋で




『……っ……なきゃ……』



なまえが何か云いかけた。



「如何した?」

『……行か……なきゃ……』

「行くって……何処に行くんだよ」

『……織田作のところ……織田作が、行っちゃう前に』



云い掛けてから、中也はなまえを引き止めるように抱き締めた。



「聞け。ミミックの連中は兵力を一か所に集めつつある。これまでの戦闘の規模からミミックのおおよその残り兵力が判ってきた処だ、詳しくはこれから――」

『それでも!!織田作はきっと、一人で行ってしまう、一人で……』



云ってからなまえは、震える手指をぎゅっと握った。
中也の腕の中で、自分を落ち着かせるように嗚咽を押さえながら小さく深呼吸をした。そんななまえを見て、中也は云った。



「手前が行くなら俺も行く。場所は」

『判らない……でも治が今爆破があった場所に向かってて……』

「爆破、だと?」

『……龍頭抗争のときに孤児になった子供達を、織田作は養ってた』



唐突ななまえの発言に、中也は抱き締めていた腕を緩め、なまえの顔を見た。



『その子供達が、たった今ミミックに全員殺された』



なまえの言葉に、中也は目を見開いた。
沈黙が流れた。そして、床に落ちたままのなまえの携帯が鳴る。


なまえはそっと携帯を拾い上げ、耳に充てた。
電話の向こうから聞こえてきたのは、太宰の声だった。



『……治!織田作は』

≪ミミックの本拠地に向かった。これから首領に、幹部級異能者の小隊を編成しミミック本部へ強襲をかける許可をもらいに行く処だ。なまえ、わかるね。ロビーで待っていてくれ≫

『判った』



短い返事をして電話を切ってから、なまえは気付いたように中也を見上げた。



『ねえ、中也。首領は戻ってるの?』

「ああ、首領なら数時間前に戻った」

『今日、”何の会合”だった?』

「否、今日の会合は極めて機密度が高い。誰も聞いてねえ筈だ」



頭の中で散らばっていたピースが、少しずつ埋まって行くのを感じた。なまえは、考えるように俯いてから、顔をあげて、中也に向き直る。

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