第18章 土塗れの迷い犬
「組合を倒せる情報が手に入ったって本当ですか!」
探偵社の事務所で、敦の声が響いた。
「今、奥で作戦立案中だよ。」
谷崎がそう云って、会議室を指差した。
慌てて敦が会議室の扉を開けてみれば、其処には机に突っ伏したなまえと、推理勝負に勝利し組合の情報を掴み帰ってきた乱歩と、そして太宰が話し込んでいた。
「凄い情報ですね、乱歩さん。値千金だ。」
「好きに使え。僕は興味ない。」
「これを使って組合の背骨を一撃で圧し折るとすると……潜入から爆弾?」
「はぁ?無理だろ。通信から狙撃で着水して失敗だな。」
「………本当だ。じゃあ特務課突入からなまえだと?」
「無理。狭い場所じゃあなまえちゃんの異能力は不利。そのまま船ごと堕ちる」
「賢治君だと?」
「無理。地上戦になって痛み分け延長戦」
「あぁ……確かに となると敦君か」
「ふぅん。ま、”細雪”を使えば悪くない」
「ですね……では潜入手段は?」
「それこそ特務課だな」
「すぐ掛かります。最後は山?」
「海だ」
「了解」
太宰と乱歩が繰り広げる、ハイペースな会話に敦はハテナマークを浮かべていた。
なまえといえば、もう聞くのすら諦めて書類で紙飛行機を作っている。
「よし、それじゃあなまえ、早速向かうよ。」
太宰の言葉と共になまえは紙飛行機を飛ばすと、椅子から立ち上がった。