第17章 双つの黒
「その……真逆手前がそう思ってくれてるとは思わずに、だな………また、手前を泣かせちまった……」
不器用にぽつりぽつりと言葉を紡ぐ中也に、なまえはくすりと笑う。
『じゃあ、もう泣かせないで。』
なまえの言葉に、中也は目を見開いてから、すぐにニッと笑った。
「嗚呼、約束する。」
中也がそう云った瞬間、車の走る音が聞こえてきた。ポートマフィアの部下達が丁度此方へ到着したのだろう。
「なまえ……、」
言いかけた中也の口に、なまえは人差し指をむぎゅっと充てがった。
『……続きは、また今度。この戦争が終わったら……約束通り迎えに来て。帽子持って、待ってるから。』
―――四年前の、あの夜の続きを。
二人の間を、一陣の風が掠めた。
―――嗚呼、今日も風さえ吹きすぎる。