第15章 ウィル・オブ・タイクーン
探偵社の全員が無事に晩香堂に集まった、その翌日――。
太宰は三百ある策略の中で、一番抉い鬼札を切ることを決めた。
其れは――この戦争に、政府機関を引き摺り込む事だった。
とある停車場のフェンスに、太宰となまえの二人は背を預けている。
ブロロロ、と音を立てて、一台の高級車が二人の前にぴたりと停まった。
「何年振りですかねぇ、太宰君、なまえさん。連絡を貰った時は驚きましたよ。」
内務省 異能特務課 参事官補佐
坂口安吾―――能力名《堕落論》
「やあ、安吾!元気そうじゃあないか!」
スタスタと安吾に向かって行く太宰。そして、一瞬の隙に安吾の背に隠されていた銃を引き抜き彼の頭に充てがう。
「善く来たねえ、安吾。如何して思ったんだい?私が君をもう許していると」
「マフィアを抜けた貴方達二人の経歴を洗浄したのは僕ですよ。借りがあるのは貴方の方では?」
「………」
しん、と静まり返ったその場の沈黙を破ったのはなまえだった。
『どうせこうなることを予期して弾を込めてないんでしょ。』
なまえの言葉に、安吾はにこりと笑う。
「相変わらずご理解が早くて助かります。」
太宰は面白くなさそうに安吾に銃を返した。
「で?旧交を温めるのが目的でないならご用件は?」
「いやぁ流石に宮仕えは善い車だねぇ」
言いながら太宰は、安吾の車をぽんぽんと叩く。
「指紋がつくのでやめてください」
「ドライブしない?」