第12章 三社鼎立
「同棲なんて聞いてませんよ!!」
探偵社の朝は、今日も騒がしい。
血相を変えて探偵社の扉を開けて入ってきた敦は、大きな声でそう叫んだ。
「部屋が足りなくてねえ」
太宰ののほほんとした答えに、敦は顔を青くしている。
「それに、新入り二人には家賃折半が財布に優しい!」
「しかし……」
「彼女は同意しているよ?ねえ?」
「指示なら。」
鏡花はそう言って、じっと敦を見上げた。
眉を下げて困ったような顔をする敦に、太宰はそっと耳打ちする。
「判らないかい、敦君。マフィアを追われ縁者もない彼女は沼の中のように孤独だ。それに裏切り者を処する為組織の刺客が来るやもしれない…独り暮らしは危険だよ。」
「た…確かに…」
「君が守るんだ。大事な仕事だよ。」
「判りました!頑張ります!」
太宰の言葉に、単純な敦は瞳をきらきらさせながら潔く返事をした。
「(太宰の奴、また敦で遊んでいるな…)」
国木田は心の中でそう思いながら、その光景を静かに見ていた。
『おはようございまーす!』
そんな折、なまえが事務所へと入ってくる。
「はっ!!なまえちゅわーーーん!!」
咄嗟に抱き付こうとする太宰を押しのけ、なまえは自身のデスクに向かった。
「なまえさん、おはようございます!!」
敦の元気な挨拶に、なまえが答えようとすれば。ぴとり、と自身の腕にくっついて来たのは鏡花だ。
『鏡花ちゃん、敦君、おはよう。』
「……おはよう……、ございます…」
にこやかな挨拶をするなまえに、鏡花は小さくだが、確かにそう答えた。