第9章 うつくしき人は寂として石像の如く
「だろうね。けどそれは幹部会の決定事項だ。決定前に私を勝手に死刑にかけたらば、独断行動で背信問題になる。罷免か、最悪処刑だ」
「そして……俺が諸々の柵を振り切って手前を殺したとしても、手前は死ねて喜ぶだけ?」
「ってことでやりたきゃどうぞ。後一つ言い忘れてたけど、私はなまえの身を危険になどさらしてはいないよ。むしろ私不在の探偵社にいるより、このポートマフィアにいたほうがよっぽど安全だ。君たちはなまえを殺さない…いいや、殺せない。絶対に、ね」
「………」
「ほら、早く。まーだーかーなー?」
「ッ………!!」
瞬間、中也はナイフを太宰目掛けて振り下ろした。
其れは太宰の顔のすぐ側を横切り、壁に打ち込まれる。
「…なんだ、やめるの?私のせいで組織を追われる中也…ってのも素敵だったのに」
「…真逆……って事は二番目の目的は俺に今の最悪な選択をさせること?」
「そ」
「むしろ手前が俺に嫌がらせをするために待ってたって事か?」
「久しぶりの再会なんだ、このくらいの仕込み(サプライズ)は当然だよ。それに、君は私を殺せないさ。なまえが悲しむもの。なまえのことが大好きで大好きで堪らな~い中也君は、なまえが悲しむような事は絶ー対できないよ」
「……死なす……絶対こいつ、いつか死なす……」
「おっと。ところで、鎖を壊して私を解放したのは君だよねえ?私がこのまま逃げたら、君が逃亡幇助の疑いをかけられるよ?」
「ッ…!!」
「君が言うことを聞くならー探偵社の誰かが助けにきた風に偽装してもいい」
「……それを信じろってのか」
「私はこういう取引で嘘は吐かない。知ってると思うけど?」
「手前っ………望みは何だよ」