第8章 『生い立ちの歌』
「泰子、一度しか言わ無ェ。俺は何があっても手前を置いて行か無いし、手前の隣りに居てやる。だから、手前も勝手に居なくなるなよ」
「嗚呼、もう1回言ってくれる?」
「此ンの青鯖女...っ!!」
椅子から立ち上がり泰子に詰め寄る中也。
そんな中也を見ながら泰子はケラケラと笑っている。
「冗談。約束するよ、中也。そうだな...死ぬ時は心中でもしようか」
「太宰みてぇな事言ってんじゃ無ェよ」
中也は呆れながらも泰子の首に腕を回して引き寄せると、口付けを落とした。
泰子も中也に答えるように目を閉じながら、腕を彼の首へと回した。
「却説、一先ず一緒に住んでみる?」
「は!?」
「中也の家に私が居候。どう?」
「手前、家事を俺に押し付ける心算だろ」
「其れも良い考えだね」
泰子が微笑むと、中也も泰子へ微笑みを返した。
二人はもう一度口付け交わすと、書類を手に取り何時もの日常へと帰って行った。
そして泰子がその日の内に中也の家に転がり込んだ事は翌日には太宰の耳にも届いた。
-完-