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生い立ちの歌《文スト》

第4章 『北の海』





「嗚呼、広津さん。来てくれて有難う。呼び出したのは勿論、黒蜥蜴に仕事を任せたいからだよ」

「なんなりと」



アジトへ到着すると、直ぐに泰子は広津を呼び出し仕事の説明をしていた。



「今夜薬の取引現場を抑える。その時間まで取引場所の人間を交代で監視して欲しい」

「妙な動きをした場合は?」

「消さなくていいよ。但し絶対に逃げられない様に」



広津は黙って頭を垂れた。
広津の返答に泰子は満足気に頷く。



「頼んだよ。取引には私と中也が行くから」



話は済んだと言う様に泰子は広津へ背中を向けるように椅子をくるりと回転させた。
然し広津は未だ立ち去らずに口を開いた。



「時に長谷川君。太宰君の噂は聞いたかね?」



"太宰"という単語に泰子はピクリと手を震わせた。そしてもう一度椅子を回転させると、広津の目をじっと見据える。



「いや、何故?」

「太宰君が武装探偵社に居るらしい」

「──そう」

「広津さん、其れは確かか?」



今まで黙っていた中也が泰子と広津の会話に口を挟む。眉間には深い皺が刻まれていた。



「さあ。噂でしか聞いていないからね」

「兎に角今は仕事が優先だから。彼奴の事だから何か考えがあるんでしょう」

「──そうだな。頼んだぜ」



広津は軽く一礼すると二人の執務室を後にした。そして携帯を取り出すと部下へ連絡をし、指定された店へと人員を配置したのだった。


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