第3章 『湖上』
「いっ...てぇ...」
「ちゅう、や...っ、君は、居なくなるな...っ」
「──手前だけ置いていかねぇよ」
誰が、とは容易に想像がついた。
中也は一度腰を引くと骨同士がぶつかる程思い切り突き上げる。
「ああっ...!」
「彼奴と一緒にすんな...っ!」
「...っう、ん...!」
そのまま激しく腰を打ち付けると、中也も限界が近付く。
表情を見られたくないのか、顔を背けている所為で露になっている泰子の首筋に、今度は中也が歯を立てる。
ぐっと皮膚に歯が食い込んでいくと、泰子はビクリと体を震わせた。
「中也...っ、ま、た...イキそ...っ」
頷く代わりに更に歯を立て、中也も腰のペースを早める。
その度に善い所に当たるのか、泰子の中がぎゅうっと締まり、その刺激で中也も果てた。漸く中也が離れた泰子の首筋には血が滲む程の歯型がくっきりとついていた。
「ねぇ、痛いんだけど」
「お互い様だろ」
情事後の一服をしながら泰子は左の首筋を摩る。中也も右の首筋を摩りながら、トン、と灰皿に灰を落とした。
「風呂入ってさっさと寝るかァ」
「もう寝てる予定だったのに。お風呂ももう入ったのに」
文句を言う泰子だったが、その言葉とは裏腹にその横顔は何処か満足気だった。