第12章 Episode 11
「さくらちゃん...。今日のこと、ユキさんには言わない。ただ、これからプレゼントBOXの中身は俺が確認する」
「そういうわけには...!」
「じゃあユキさんに言う」
「うっ...わかった...」
こうしてカミソリ事件は百くんと私だけの秘密となった。
「バン、今日のライブ『未完成な僕ら』最初に歌おう。さくら、音準備できるよね?」
「もちろん!」
「岡崎さんのためか?」
「そうだよ。Re:valeのファンなら1番聴きたいはずだろ」
ユキも岡崎さんのことは気に入っているようだった。
しかし、これが『未完成な僕ら』を歌った最後の日になってしまった。
『未完成な僕ら』を歌っている最中に照明が落下した。
そしてユキを庇ったお兄ちゃんの上に落ちたのだ。
歓声が悲鳴に変わり、私とユキはお兄ちゃんの元へ駆け寄った。
「お兄ちゃん!!お兄ちゃんっ!!!」
「バン...っ!返事をしろ、バン...!!!」
救急車が来るまでの間、呼び続けた。
幸い、お兄ちゃんは命に別状はなかったが顔には今も跡が残っている。
そして、私の指の傷跡もうっすらと残ったままだ。
退院後、お兄ちゃんと私はユキと百くんの前から姿を消した。
ユキが九条の言いなりにならないように、だ。
あの頃の私たち兄妹は他にやり方もわからず、そうすることでしかユキを守ることが出来なかった。
「っ...ごめんね、ごめんね...、ユキ...っ」
涙を流しながら、いつの間にか私は眠ってしまっていた。