第12章 Episode 11
そしてRe:valeを結成して5年ほど経ったある日。
九条という人物から名刺をもらった。
ライブを見て気に入ったと言っていたが、最初から目的はユキで、お兄ちゃんと私は眼中になさそうだった。
九条はユキと話したいといい、お兄ちゃんもいい機会だから行ってこい、と背中を押した。
「キモい」
戻ってきたユキの第一声はこれだ。
ユキから話を聞くと、九条はゼロを超えるアイドルを作りたいのだという。
「レールの上を行くユキなんか見たくない」
「そんな僕もキモいでしょう?」
「うん、キモいね」
そう言って笑い話になっていたが、今度は九条はお兄ちゃんと私と話したいと言ってきた。
周りから、という魂胆だったのだろう。
九条から二流だと言われ、お兄ちゃんはショックは受けたようだが納得もしていた。
私は、ただただ悔しかった。
そして意地でも歌い続ける、そう決めた。
そして同時期に、岡崎事務所からも声をかけられた。
「はじめまして!岡崎事務所の岡崎凛人と申します。兄が社長を務めている、出来たばかりの小さな事務所ですが、うちでCDを出してみませんか?」
「はあ...。君、いくつ?」
「ユキ!」
「に、22です。新卒なんです」
「じゃあ俺たちと同じ年くらいですね。俺たちのライブ見てくれたんですか?」
「何度も足を運んでいます!Re:valeは日本の音楽を変えますよ!」
そういう岡崎さんは目を輝かせていた。
ああ、この人なら──きっとお兄ちゃんはそう思ったのだろう。
「バンさん!機材ここでいいですか?あと、さくらちゃんプレゼントBOXの中身仕分けしておいたよ!」
「いいよ、ありがとう」
「百くんありがとう!」
岡崎さんと話していたのを見ると、百くんはお話中すみません、と一言謝罪し戻って行った。
「あの子は、他のグループのメンバーですか?」
「ああ、大学生なんです。人手が足りないときお願いするとたまに手伝いに来てくれるんですよ。妹だけじゃ力仕事はなかなか辛いですから...。岡崎さん、CDデビューのお話ありがとうございます。ゆっくり考えさせてもらいます」
「はい!是非!よろしくお願いします!」