第11章 Episode 10
そしてクリスマスイブ。
後に血のイヴと呼ばれる酷い事件が起こった。百くんとちゃんと話したのはこの日が初めてだった。
ユキに彼女をとられたと勘違いした男が、グループをつれてステージに乱入してきたのだ。
「さくらは出てっちゃだめ」
「でもっ!」
ユキに腕を引かれて私は引き止められていた。
その時だった。
百くんが颯爽とステージ飛び込んで助けてくれたのだ。
その時の暴れっぷりを見て、お兄ちゃんとユキは密かに百くんのことを、"狂犬"と呼んでいた。
「すみませんでした!!ステージをめちゃくちゃにして!本当に、本当にすみません...っ!」
事件が落ち着いた後、謝りに来てくれた際にお兄ちゃんが連絡先と名前を聞いた。
手帳に記された特徴的な文字を見て、ユキが珍しく興味を持った。
「手紙くれてたよね。名前、なんて読むの」
「えっ...、す、春原百瀬です...!」
「春原百瀬...そう。ありがとう、モモくん」