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雪解けの春《アイナナ》

第7章 Episode 6





その日、私はレッスン場にいた。
お兄ちゃんによるとIDOLiSH7は今日は冠番組の収録日で全員不在らしい。
1人でピアノを伴奏しながら弾き語りをしていると、時間はあっという間に過ぎていた。
ふと時計を見ると、歌い始めてから時計はゆうに3周していた。



「サクラ、やはりアナタの歌は素晴らしい!」

「ナギ?いつの間にいたの?」

「ほんの10分ほど前です」



ナギがいるということはもう収録は終わったのだろう。他のメンバーがいないのは珍しい。



「どうしたの?」

「サクラ、相談があります」



ナギの改まった様子に、自然と背筋が伸びる。



「ミツキのことです」

「この間元気なかったけど...そのことかな」

「ワタシはミツキのことを凄いと思います」

「うん、私もそう思う」



そう前置きをしてから、ナギは今日の収録で三月がいつものように番組を回せなかったこと、理由を問うと泣きながら「何をどう頑張っていいのかわからない」と言ったことを教えてくれた。



「ナギは?なんて言ったの?」

「頑張らなくていい、と。そのままのミツキでいいと言いました」

「ナギらしいね」

「でもミツキは嫌われたくない、と言っていました。ワタシたち──IDOLiSH7を好きだと言っている人たちからは、嫌われたくない、と」




たしかに三月の周りを上手く活かす能力は、陸の歌、環のダンス、ナギの容姿のようにぱっと見てわかるようなものではない。
それに三月は優しい。
自分たちを好きだという気持ち全てに答えたいと思って、それ以上を返したいと思って、その好きだという気持ちに押しつぶされてしまいそうになっているのだろう。



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