第4章 Episode 3
「おはよー...皆今日は頑張ってね」
「さくらさん!?ど、どうしたんですか!?」
「大丈夫だよ、壮五。昨日遅くまで曲作ってただけだから」
ライブ会場で関係者パスを受け取り、楽屋へやって来た私は、心配してくれた壮五に椅子を勧められ、素直に腰掛けた。
「紡ちゃんに時間になったら起こしてもらうようにお願いしたから、少しだけ寝かせてもらうね...」
「サクラ、無理は良くありません」
ナギの言葉を聞きながら私は机に突っ伏すと、すぐに眠りに落ちてしまった。
そして紡ちゃんに起こしてもらうまで、一度も目を覚ますことなく眠るとだいぶスッキリしていた。
「ありがとうね。んんー、よく寝た。これでしっかりコンサートを見れるよ」
「お水、よかったらどうぞ!」
「ありがとう。紡ちゃんみたいな妹が欲しい...!」
困惑しながらも照れたように笑う紡ちゃんと、関係者席へ向かうと、ゼロアリーナの総支配人と思われる人も既に席についていた。
観客もたくさん入っていて、私はIDOLiSH7が少し羨ましくも思った。
いつか、私もコンサートでファンと直接感情のやり取りをしたいな。
「始まりますね...!」
「うん。頑張れ、IDOLiSH7!」
コンサートは大盛況。観客からはアンコールの声が鳴り止まない。
しかし、終盤から陸の顔色が良くないことに私と紡ちゃんは気付いていた。
そのため途中から紡ちゃんは関係者席を離れ、舞台袖で待機していた。
案の定アンコールには陸は出てこなかった。