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御伽アンダンテ【HQ】【裏】

第8章 現実逃避行


「宿題がこっちのテキストで、付箋から赤い付箋までで…、こっちがこのレポートで…」
鞄を2つ持って登校した終業式。
の置いてある荷物を持ち帰らなくてはならなかった。
整えられたロッカーにはほとんど荷物はなく、むしろ届ける予定の教科書類の方が多かった。
夏休みの宿題は、何故こうも毎年多いのか、と呆れながら説明をした。
は終始俺とは目も合わせず、外の景色を見ていた。
「どうした?」

「…牛島くん…
別れよう…?」

それは最も彼女から聞きたくなかった、残酷すぎる言葉だった。
「、今冗談を言っている場合では…」
「冗談じゃない……冗談じゃ、ないんだよ…」
やっと目が合う。
窓の夕日が反射したその瞳は、真っ赤で、まるで静かに燻る火のようだった。
「、ふざけないでくれ」
「牛島くん……、私のせいで、部活休みがちだって。
今度の大会、外されるかもって、聞いた……」
「デタラメだ」
最低限のことはこなしてから来ている。
それは自分の誇りであり、すべてを懸けると決めているからだ。
「にそう思われるのは心外だな」
「……っ、でも…」
「誰が言ったんだ?」
「……クラスの、人に……お見舞い、来てもらって……」
「もう一度言う。デタラメだ」
俺の言葉より、一言二言しか交わしていない奴らの方を信用するのかと思うと、苛ついた。
「……」
納得いかないという顔をされ、眉間にぐっと皺が寄る。
「担任の先生も…来てくれたんだよ……。
牛島くんの、スポーツ推薦のこと、心配してた……」
「関係ない。余裕だ」
「……ねえ、私のせいだよ…?」
苛々が限界にきた。
なるべく傷付けないように言葉を選べる範囲内で、静かに言った。
「お前は、俺よりそっちを信用してるのか?」
「…………」
黙って首を横に振った。
「ならいい」
「……でも!」
「、先にこっちの説明を終わらせていいか?」
「ご………ごめんね……」
今にも泣き出しそうな顔で、はメモを取り直す。
疲れているせいか、目の下に隈が出ている。
やり取りをしていて今やっと気付いた。
突っ掛かってくるのは睡眠不足もあるかもしれない。
看護士が数人来て、回診が始まる。
仕方なく中断し、病室から出た。
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