ここはシリーズif短編【HUNTER×HUNTER】
第4章 上司はイルミさん
そもそも仕事面だけを見るならば私は上司に疎まれても当然な出来損ない部下な筈……そんな私を食事に誘った……?
しかも話しの内容は私の事ばかりで………これじゃあまるで私に興味があるみたいじゃないか……
(………もしかして………脈あり……?!)
食事の際はエピソードが恥ずかし過ぎてそれ所では無かったがよくよく考えると上司は私に気があるのでは?!なんて夢迄見てしまう事態だ
途端にドキドキと高鳴る胸は全身に脈打ち期待と緊張で一杯に成った
ゆっくりと停車したタクシー
「………」
生唾を飲み込み恐る恐る上司に視線を向けると途端に熱くなる頬
上司は大きな瞳を細めると私と真っ直ぐ視線を合わせて溜息を付いた
「やっと気付いた?」
一際大きく高鳴る心音
………気付いたとは………まさか私が考えている事だろうか………?
「お疲れ」
頭が混乱してフリーズする私に単調に言った上司
その言葉に降りなければ、と慌ててタクシーから降りた
ドキドキと騒がしい胸を抑えて振り返り頭を下げる
「今日はありがとうございました、お疲……………っ!!」
私の言葉が最後迄続かなかったのは
大きな掌に手首を掴まれ引かれた先で彼に唇を奪われてしまったからだった
柔らかな感覚
鼻を掠める男性の香り
頭が真っ白に成って呼吸すら忘れる一瞬の出来事
驚きで見開いた瞳
彼は僅かに離れると私の気持ちを確かめる様にもう一度唇を重ねた
優しく重ねられた温もりにやっと状況を理解する
そして先程の言葉の意味を確信した
時間にすれば一瞬の触れ合いだったが私の身体中を駆け巡る心音は耳に煩いくらいだった
唇が離れた後に見た事の無い妖艶な笑みを湛えて
「おやすみ」
と言った彼にクラクラと目眩を覚える
走り去ったタクシーを呆然と見送った私は暫くその場から動けなかった
「…………いきなりチューとか……ズルいですよ………」
鮮明に残った柔らかな感覚を指で確かめながら落とした呟きは夜風に温かく溶けて行った
おわり