第6章 女王様は#
「女王様、おはようございます!」
沢山の働き蜂に頭を下げられ、あちこちから声をかけられる。
何も言わずとも私の道を開けてくれる優秀な女の子達だ。
対して雄達は隅で固まり、一向に私と目を合わせようとしない。
(ほんと意気地無しね…昨日の雄の方がまだマシだったわ。)
雌と違い、雄は一度の性交が終われば命も終わる。
そうなれば、私の元にやって来るのは勇敢な雄…という事になるが、私からすればつまらない雄達だ。
周りなんて気にせず堂々と歩いていると、一際背の高い雄が壁に凭れ掛かっているのを偶然発見する。
同士で固まる事をせず、じっと私の方を見つめているので興味が湧いた。
私が近づいても狼狽えないので、彼への期待が膨れてゆく。
「ねぇ、あなた…名前は?」
「…レイですけど。」
「ふぅん…顔もなかなか良いし、背も高い…気に入ったわ。あなた今晩寝室に」
「お断りします。」
「なっ…!」
私が交尾を断る事はあっても、断られる事は無かった。
あまりの衝撃に私は言葉を見失い、愚かとしか思えないレイを見つめた。
私達の会話を聞いていた周囲の蜂たちも驚きの声を上げ、口々に言いたいことを言う。
「女王様のお誘いを断るなんて…」
「そりゃそうだよ死にたくないもん」
「おい聞こえるって」
「でも、名誉なことなのに…」
その話を耳に挟んだ私も気を取り直し、もう一度レイに向き直る。
「そうよ、私と交尾するのは最も名誉なことなのよ…!断るなんてどうかしてるわ!」
「……」
「と、とにかく、今晩私の部屋に来なさい。いいわね?」
「……」
レイは頷かない。
うんともすんとも言わない。
(何よ何よ!こいつ、物理的にも精神的にも頭が高いわ…!)