第1章 真島という男
ニヤリと笑って雅美の頬に手を沿える真島。
何だか軽く玩ばれてるような気分に陥った雅美は、
そんな事ないですっと恥ずかしがりながら、真島から目線を外してホットドリンクを一口飲んだ。
「まっ真島さんの事だから、色んな女性に同じ様な事言ってるんじゃないんですか?」
一人動揺を隠せない雅美に真島の鋭い視線が突き刺さる。
「んなワケないやん。俺、そない人間に見えるんか」
「だって……たくさん遊んでそうだし」
雅美が小声で言うと、何言うてんねん!と厳しいツッコミがきた。
「何で好きでもない女に、そないな事言わなあかんのや。そこまで俺廃れてないわ」
少しぶすくれた口調でグラスを傾け、アルコールを一口飲む真島。
その不機嫌そうな表情に雅美は自分の言った事を後悔をしたと同時に、真島の言った一言が頭の中を駆け巡る。
――好きでもない女に――
決して聞き流してはいけないフレーズに、雅美は思わず我に返った。
たしかに真島の言動で自分に気があるのは、嫌でもわかる。
いくら鈍感な人間でも直接的な言葉を目の前で言われたら気づかずにはいられないだろう。
自惚れと言われたらそれまでかもしれないが、
真島の態度は明らかに……。
再びあの高鳴りが雅美の胸の中を支配して、顔が一気にほてっていくのがわかる。
「――俺、本気やで」
その一際低い声がすぐ隣から聞こえてきた。
雅美は真島の顔を見ることが出来ず、コップをぎゅっと両手で握りしめた。
でも隣からは痛い程の視線が直に感じる。
雅美はゆっくりと目線を隣に移すと、真島の鋭い切れ長の瞳が自分に向けられていて、
その瞳はいつになく真剣に見えた。
ドキンと一際大きく心臓が跳びはね、体温が更に1度上昇する。
息をすることすら忘れて真島を見つめる雅美に、真島が小さく口を開いてこう言った。
「本気で……雅美ちゃんの事好きや」