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扉の向こう

第2章 お家。


【桜凪side】


嫌な夢だったな...。

さっき、一瞬見えた男の人。大きな手で、優しい笑顔で、私の頭をなでる...。でも今度は、大きな手で私の頭をなでるけど、とても辛そうな、とても寂しそうな、でも無理矢理笑って、胸を締め付けられるような表情...。やっぱり、声は、聞こえない...。




あの人は、誰なんだろう...?








回りを見渡すと、暗くて知らない部屋。ベッドに寝かされていたみたい。横を見ると、誰かがベッドに寄りかかって座ったまま眠っていた。暗いし、うつむいてて、顔が見えない。

起こさないように、そっとベッドから抜け出して、その誰かの顔を覗き込むと、メガネをかけたままの大和さんだった。...ってコトは、ここは大和さんの部屋なのかな?



『せめて...、メガネは、外した方が良いよね?』


起こさないように、そぉっと、そぉっと、外していたら...、大和さんと目が合ってしまった。


『あ...。』

「...なぁにしてんのかな?お前さんは。」

『寝てたから...、せめてメガネは外した方が...、良いかなぁ?って。』

「それより、お前さんはもう大丈夫なのか?」


大和さんはベッドに腰をかけ、私は大和さんの前に向かい合うように立った。


『うん。大丈夫、なんともない。あの時...、私、あのまま気絶しちゃった?...んだよね?』

「ああ。...飯、半分くらいしか食ってなかったから、勿体無かったな。」


ははっと軽く笑いながら、んーっと体を伸ばしていた。ずっと座ったまま寝ていたから、きっと凝り固まってしまったんだ。


『ごめんなさい、私がベッド占領しちゃったからだよね...。体、大丈夫?』

「ん?...ああ、気にすんな。それより、まだ夜中だ。もう少し寝ておけ。」

『ん...。』


なんだか、眠りたくないな...。また、あの嫌な夢を見るような気がして...。
なんとなく態度に出ていたのか、大和さんが私の顔を覗き込もうとしている。


「...どうした?寝ないのか?」

『...あの時、...気絶する直前でね、男の人が見えたの。優しく笑いながら、大きな手で、私の頭をなでてくれてた...。』

「...。」

『...。』

「...ゆっくりで良い。まだ話したくないなら、別に今じゃなくて良い。」


 
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