第7章 四月莫迦を君と 其の二
朝からいちゃついて居るのは何時も。
そう云えば愛理さんと付き合い始めてから太宰さんは時間通りに出社するようになった。
理由は簡単、彼女が毎日愛らしい声で起こしてくれるかららしい。
今日も起こして貰ったのか一緒に出社していたし変わらない。
だとすれば愛理さんが言っている嘘とは何だろう?
『考え込んでいるね、敦君。』
「検討も付かないんですけど…」
『じゃあ特別にヒントを上げようではないか。私と治がつく嘘だ、そこらの可愛らしい嘘とは思わないでくれ給え。』
「何時になったら太宰さん口調止めるんですか。…ってそんなに四月莫迦に気合い入れたんですね。」
『うん、折角の催しだからね!では其れを踏まえて最近敦君に起こった非日常的な事とは?』
僕は唸りながら精一杯頭を回転させ考える。
するととんでもない結論に至る。
真逆、流石に有り得ない。
幾ら何でも……いや、あの二人なら有り得るかも。
「真逆太宰さんと付き合っているのが嘘なんて言いませんよね?」
『おっ!御名答!』
「……はぁぁぁあ!?」
僕の反応を見てクスクスと笑う愛理さんに少し殺意が芽生えるものの反対に付き合っていなくて良かったと安堵している。
「随分と手の込んだ嘘ですね。っていうか悪戯どころか詐欺じゃないですか!」
『催し物は張り切らないと!でも敦君ホッとした顔してるよ?』
「えっ!?そ、そうですか…?」
『真逆私と治が恋人になったって事にショックを受けてた、とか?』
「へっ?」
『図星ですって顔に書いてあるよ?』
聡明な人だ、屹度僕の想いに気付いていたのかも知れない。
僕も男だ。云うことは云わなきゃ。
「あのっ!愛理さん!」
『なぁに?』
「ずっと愛理さんのことが好きでした!!」
『ふふっ、やっと聞けた。敦君ありがとう。私も好き。』
愛理さんは今までにないぐらい嬉しそうな顔をすると僕に抱きついてきた。
顔の近くにある愛理さんの髪から良い香りがする。
って僕は何て事を考えているんだ!!
いや、そもそも手放しで喜べる状況じゃない!