第7章 四月莫迦を君と 其の二
-四月一日。
『はいっ、治。あーん。』
「うん!愛理が作るお弁当は何時食べても美味しいね。」
『ふふっ、有難う。』
此れは太宰さんと愛理さんが繰り広げる何時もの光景だ。
何時もとは云えど二人が恋仲になったのは確か二週間前だった筈。
それなのにもう慣れてきている自分に恐怖すら感じる。
「あのう、お二人ってプライベエトでもこう何ですか?」
「やだなぁ敦君。私だって仕事とプライベエトぐらい分けるとも。」
「此れの何処が分けているんだ!!貴様が仕事をしている時間等無いだろうが!」
『えぇーっ、ちゃんとしてるじゃないですか。』
「お前の目は節穴か。」
『治は私の側に居ることが仕事なんですよ。』
愛理さんはふふっと笑って見せるが既に国木田さんは怒りの限界を超えているようだ。
其れを横目に僕は矢っ張り笑った顔が一番好きだなぁ、なんて眺めているとニョキっと後ろから太宰さんが現れる。
「何?国木田君に見惚れているのかい?」
「違いますよ!!」
「ふうん、じゃあ愛理か。」
「えっ!?いやっ、そう云う訳では…」
「まぁ敦君が想いを寄せていたのは気付いていたよ。其れでも今は私のものだからね。」
「はい……。」
そんな事わざわざ言われなくても分かっている。
可愛い愛理さんには同じく容姿の良い太宰さんがお似合いだ。
中身は兎も角。
何時か僕にも、愛理さん以外に好きな人が出来るんだろうか。
『敦くーん?手止まってるよ?』
「あ、はい!!すみません!」
『そんなに畏まらなくても(笑)私は国木田さんじゃないよ?』
「そうそう、こんなに可愛い愛理が国木田君みたいに予定大好き人間になってしまっては困るよ。」
『もうっ、口が上手いんだから。』
「本当の事だよ。」
「おい、貴様ら俺が居るのを忘れてないか?」
嗚呼、このやり取りの繰り返しを何度見ればいいのだろう…。