第6章 四月莫迦を君と 其の壱
「手前ェらは偶然会った俺に嘘を付いたって訳か。……否、偶然じゃねェな?」
「御名答。」
「成る程な。じゃあ俺からも一個だけ嘘ついてやる。愛理、好きだ。」
「……そう来たか。」
『いやいや、嘘って分かってるから!』
ちゃんと分かってるか?と云うと中也は愛理を抱き締める。
先程の太宰みたいに抵抗されないのを確認し、もう一度告げる。
「愛理、好きだ。返事を聞かせてくれ。」
『え?四月莫迦なんでしょ?応える必要は…』
「俺が言った事覚えてンのかよ。」
『当たり前でしょ!俺からも一個だけ嘘を付いてやる、………ってあれ?』
「漸く気付いたか。」
耳まで真っ赤にしてソワソワする愛理の頬を両手で包むようにして顔を上げさせると其のまま口付けをした。
『…中也の莫迦。でも、好き。』
「君にしてはやるじゃない。とても腹立たしいけど。」
「うるせー、手前は黙ってろ。」
END
あとがき。
最後お分かり頂けたでしょうか?
一応解説して置きますと、“嘘を付く”と言う事自体が嘘。
つまりは嘘をつかないという事です。
それにしても国木田さん、可哀想(笑)
END