第3章 夢
「愛理、私の気持ちは分かってもらえたかい?」
『はっ、はい!!』
抱き締め返されたことに安堵した太宰は愛理のおでこに口付けをすると身体を離し中也を一瞥する。
「という訳だから。双黒(小)の出る幕なんて無いよ!!」
「(小)って云うな!!」
『あっ、でもまた洋服見に行ったりお酒飲みに行ったりしましょうよ!今日凄く楽しかったです。』
「おゥ!」
「え?ちょっと愛理ちゃん、私の話を聞いていたかい?」
慌てふためく太宰さんを尻目に今までの仕返しを遂行していく。
『はい。太宰さんも綺麗な人を見かけたら声をかけますよね?』
「そっ、それはただ心中のお相手をだね。」
『私も一緒です。ただ友達と出掛けるだけです。』
「いやいや、中也だよ!?ただの友達では無いでしょう!?現にその域を超えそうだったじゃないかい!」
「ったく煩せェんだよ。男ならもっとどしっと構えてるもンだぜ。」
『そうですよ、太宰さん。』
ぐぬぬ、と押し黙ると彼はウイスキーが入ったグラスを空にする為一気に口に流し込む。
『中也、今日は本当に有難う。』
「礼ならさっきも聞いたぜ。」
『中也には感謝してもし足りないね。何か私に出来る事が有ればいつでも云って。」
「あァ。じゃアまた今度飲みに行くぞ。今日は青鯖野郎のせいで邪魔が入ったからな。」
『そうだね、ゆっくり話してみたいし。』
中也はさておき愛理から意地悪された為暫く黙っていた太宰だが彼女の最後の言葉にピクッと反応し反論をぶつける。
「何?堂々と浮気宣言かい?あまり関心しないねぇ。」
『ちっ、違いますよ!私は太宰さんが居れば充分ですから!!………御手洗い行ってきます。』
勢いに乗り恥ずかしい発言をしてしまった愛理はトイレへと逃げ込む。
残された二人はお酒を飲みながら淡々と話す。
「愛理に手を出したら本気で君を殺すよ。」
「へっ、やれるもンならやってみろ。この先彼奴が手前に愛想を尽かして俺の処に来るかも知れねェぞ?それは間違いなく彼奴の意思だ。」
「その時はまた私の元へ来るように仕向けるよ。」
「本当に気色悪ィ趣味してんな。」
「愛理を手に入れる為なら何でもするさ。」
END