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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第3章 夢




『此処ですか?妙に静かですね。』

「恐らく建物の中から見張りをしているんだろう。周囲は無人だ。やはり待ち合わせを5軒隣にして正解だね。」


私は今、太宰さんに極秘任務だと告げられ夜のヨコハマに居る。
此処は都会にしては珍しく夏は避暑地となるみたいで別荘が連なり似たようなログコテージが沢山並んでいる。
但し冬も間近である今は人気も無い。

そんな一見すると平和な避暑地に人身売買をする輩のアジトがあるんだとか…。
私達が此処に来た目的は其れを潰す事だ。


『それでわざわざ待ち合わせをする人物とは…?』

「うーん、もうすぐ来るんじゃないかなー?嗚呼、でも来たとしても黒くて小さくて見えないかも!」

「黒くて見えないなら分かるが小さいは余計だ!俺の居ねェ所で喧嘩売ってんじゃねェよ。」


暗闇からふと声がしたかと思えばその人物が現れ確認出来る。
太宰さんに比べれば確かに小さい。
……が、態度だけは大きそうだ。


「…で?此奴は誰なんだよ?」

「矢張り知らないか。まぁ組合事件後に入社したから帽子置き場でも知らなくて当然だよ。」

「手前ェは喧嘩売りながらしか喋れねェのか!!」

『あんまり大きい声を出すと彼奴らに聞こえますよ。私は武装探偵社の宮野愛理です。宜しくお願いします。』


軽く自己紹介をすると片手を差し出す。
すると向こうも片手を差し出し手袋越しに握手が成立したところで名乗られる。


「俺ァポートマフィアの中原中也だ。宜しく頼む。異能力は汚れつちまつた悲しみに。要は重力使いだ。」

『重力使い?』

「あぁ、触れた物の重力を変えられる。具体的に云えば自分の脚を重くして蹴りを入れたり、様子を見る為にベクトルを変えて天井に逆さになったりってところだな。」

「逆さになっても身長は伸びないんだよ。」

『そうなんですか…。』

「手前ェらなァ…。まぁいい。で?手前も異能力者か?」


返事の代わりに私は異能力を使い自身を透明化する。
正確に言えば気配を消す、だが。
そして背の低い彼に近付き被っている帽子をとり背後へと回ったところで透明化を止める。


『ふふっ、こっちです。』

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