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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第19章 海月




『ふふっ、そう云う事だったんですね。教えて下さりありがとうございます。』

与「何かあったら何時でも話に来な。」

ナ「ナオミも話聞きますわ!」


とても頼もしい二人に礼を云うと、拗ねた子犬の様に耳を垂らした彼を優しく抱き締める。


『云ってくれれば良かったのに。』

太「そしたら意味が無いじゃない。」

『私に教えてもらうことで一緒に居る時間が増えるとは考えなかったの?』


ハッと眼を開く治。
その様子から察するに考えていなかったらしい。


太「……じゃあ今日から練習する。」

『うん。色々教えるからうちにおいで。』


背伸びをし頭を撫でようとすると長身を屈んでくれた。
国木田君は、何てはた迷惑な奴等だ!とブツブツ云っている。


中「まぁ俺は手前ェに負ける気はしねェけどな。最後に選ばれるのは俺だ。」

太「私を誰だと思ってるの。」

『斎藤さんだぞ!!』

中/太「は?」


あ、やばい。滑った。
流石にもう古かったか。
凍りついた空気からいち早く逃げ出す為に中也の手を取る。


中「じゃアそろそろ帰るか。」


手を取っただけで私の行動を察した中也。
こういう所が楽なんだよね。
各々別れの挨拶を済ませ帰ろうとすると、一寸待て!!と制止が掛かる。


国「貴様はどさくさに紛れて何帰ろうとしている。仕事が山程或るだろうが。」

太「国木田君。空気を読んでくれ給え。今日の私の仕事は愛理から家事を教わる事なのだよ。」

国「この迷惑噴射器が!!!馬鹿を云っとらんで早く仕事しろ!」


今にも血管が切れそうな勢いで怒鳴る。
怒られている当の本人は涼しい顔をしているのだが。


『治。仕事もきちんと出来ないなら家事をする余裕なんて無いよね?真逆ヒモになりたい訳じゃ或るまいし仕事優先だよね?』


にっこりと微笑んで治を見て云えば光の速さで机に向かう。


国「愛理……と云ったか、その、助かった。毎日こうだと佳いのだがな。」

『万が一また困る様な事があれば此方の番号に連絡を下さい。なんとかしますから。』











此の日から或る者は机仕事をする時間が増え、
又或る者は愛理に尊敬の眼差しを向けると共に親しくなり、
又或る者は婚約破棄をされない為に躍起になったと云う。






END




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