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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第1章 招かれざる客




其れは何時も通り平穏な日々の一コマ。
……の筈だった。


「これうちの畑で出来た野菜です!良かったら持って帰って下さい!」

『賢治くんいつもありがとう。』

「いえいえ、美味しく食べて貰えているので僕も嬉しいです!」

『だって本当に美味しいんだもん!今回も遠慮なく頂くね?』


ニコッとはにかむと野菜を受け取る。
両者共に謙遜をしながら平穏に話をしていたが、其れを壊すきっかけとなる火蓋が徐々に落とされていく。


「今回凄く重いので家まで持ちますよー。」

『いいよいいよ!これくらい平気だから!』

「そうですか?本当に重いですけど…。」

『っ!?確かに重いかも…。分けて持って帰ろうかな。』


顎に手を当て苦笑いを浮かべる彼女に着火したのは武装探偵社一の平和主義者とも云える中島敦だった。


「そう云えば僕、愛理さんが住んでいる処知りません。」


二人の会話を横で聞いていた敦はきょとんとする。
そんな彼を横目に皆そう云えば、と口を開く。


太「私も知らないな〜。」

国「俺も知らんぞ。」

谷「知らないですね。」

江「僕も知らなーい。」

敦「え!?乱歩さんも知らないんですか!?」


敦を始め、国木田と谷崎が驚くのも無理はない。
乱歩の超推理を使えば教えて貰わなくとも瞬時に分かる筈だ。


江「だって出社の時異能力使うんだもん!」

敦「そうか!異能力のエジステンツァを使えば気配は完全に無くなるんでしたね。」

江「そっ。だから超名探偵のこの僕もさすがに半径5キロメートルまでしか絞れないって訳。」

太「って事で〜、愛理ちゃんの家に行ってみようか!」


元気よくソファから上半身だけを起き上がらせた太宰は何時になく目をキラキラさせる。


『何の脈絡もありませんよ。それにまだ仕事中です。あと乱歩さん、半径5キロメートルでも充分凄いです。』

「君は何時からそんな国木田君みたいな事を云うようになったんだい?」

『たった今からです!あ、仕事終わってから来るのも駄目ですからね!』

「よっ、読まれてる…」


図星を突かれた太宰は側にあったソファーにうつ伏せると、其処へすぐさま国木田がやってきて説教を始めた。



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