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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第14章 ビー玉




『ハァハァ…。もう無理っ。』


冒頭から艶っぽいシーンを期待した貴方!
残念。此の小説にはそんな展開はないのよ。
じゃあ何弱音を吐いているのかって?
それは…


「見つけたぞ!!」

『えっ!?……早すぎ。』


帽子を被った橙色の髪の男が視界に入り、咄嗟に逃げようとしたところで腕を掴まれ不可能に終わった。


「待てコラ!逃げんじゃねェ!」

『人を殺しそうな形相で追い掛けられたら誰だって逃げるでしょ!』

「実際に殺してやりてェンだよ!!毎度毎度懲りねェ野郎だな手前は!」

『私は野郎じゃ無いし、きちんと鍛錬しておかないと腕が鈍るもん。』

「悪戯する腕なんか無くったっていいンだよ!」

『あぁー、もう限界!走れない!歩けない!おぶって!』

「手前ェが逃げるからだろうが!………ほら。」

『ふふっ、有難う。』


何だかんだ優しい中也の背中で考える。
矢張り良い歳をした大人がマフィアのビル内で鬼遊戯(鬼ごっこ)をするもんじゃない、と。
そもそも鬼が体力お化けって云う事から間違い。
此れじゃ本物の鬼だよ。


「今失礼な事考えてただろ?」

『えっ!?いやっ、そんな事は…』

「そもそもは愛理が悪戯するのが悪ィ。」

『悪戯って……。ただハムスターの住処を作ってあげただけじゃん。』

「俺の帽子の中じゃなけりゃな!?」

『だって居心地良さそうだったんだもん。』

「だからって作るなよ!!毛取るの大変だったンだぞ!?」

『丁度今生え変わりの季節だもんねー。』

「本ッ当に手前ェはよォ……!」


私の執務室へ運んでくれたのは良いがソファーに乱暴に落とされる。
此処のソファー一寸硬いから痛いんだけど。


『其れより用が有って来たんじゃないの?』

「あ!!そうだ、愛理の所為で忘れてたじゃねェか。」

『鶏は他人の所為にする事なく三歩歩けば忘れると云う現実を受け入れてるよ?』

「悪ィのは他人じゃなくて他鶏だからな。」

『ねぇ、其れ何て読めば良いの?よそどり?たどり?』

「何でも良いンだよ!!ッたく話が進まねェ…。」



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