第9章 君の手をひいて
「迷惑掛けて……ごめんなさい。」
「迷惑だなんて思っていませんよ。
それより謝らなきゃいけないのは僕の方だ。
さんを誤解させてしまいましたから。」
「…………誤解?」
まだ床にペタンと座り込んだままの私の前に屈んだバーナビー。
その大きな手が私の頬をそっと撫でた。
「僕はさんの能力が目当てじゃありません。」
「…………え?」
驚いて目をパチクリさせる私に、バーナビーは柔らかく微笑みかける。
「こう言いたかったのに、
さんってば最後まで聞いてくれませんでしたね。」
「だって……
だってタイガーに私とはそんなんじゃないって……」
「はあー……アレは虎徹さんが先走っちゃいましたからね。
僕はもっとちゃんと段階を踏んで
さんと恋人同士になりたかったんですけど……」
「え………?ええッ!」
顔を赤らめて私から目を反らすバーナビーに、私の方が目を反らせない。
「僕はこういった事情に疎くて……
女性に対してこんな感情を抱いたのも初めてなんです。
でもここに来る間に虎徹さんに叱られました。
BBJである自分に胡座を掻いて悠長に構えてると、
さんを他の男に盗られちまうぞ……って。」
……………嘘でしょ?
私、また自分に都合の良い夢を見てるだけなんじゃないの?
それでも頬から伝わるバーナビーの温もりが、これは夢じゃないんだって気付かせてくれる。