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それでも…世界を愛そう『文豪ストレイドッグス』

第3章 帽子の似合う君。


「あれ?もしかして…紅葉が引き取りマフィアに入ったと報告を受けた、少年だよね?」
「!、あ、貴女は…白雪、幹部っ」
「おや。実に光栄だ。君のような可愛らしい少年が私を知っているのかい?」

長い廊下を歩いている時に、菊乃は初めて彼に出会った。治と年が同じであろう少年は深々と菊乃に頭を下げた。コツりとピンヒールを鳴らしてゆっくり少年に近付き手を伸ばす。緊張感が漂う、なにか失礼な事をしてしまっただろうか…その伸ばした手に恐れてしまいぐっと力を入れて目を閉じた。するとなにかがポフリと被さり瞬きさせて恐る恐る見上げた少年がいる。甘く香水ではない、柔らかい匂いが包まれて一体なにが起こったのかが分からなかった。

「君、帽子似合うね…」
「えっ…」
「後は髪をもう少し伸ばすといいかな、君は治と同じく顔が綺麗だから…きっと可愛らしくなるだろう」
「あ、えっ…?」

帽子が似合うのは知っている菊乃は、少し悪戯するように帽子を被らせて見た少年に満足げに笑う。まだ若い少年の髪を指先へ絡めて囁くように真っ直ぐ射抜くように見下ろせば、ブワッと全身が震えるような感動を味わった。

「今日は少しばかり暇を持て余していて、少し紅葉の様子を見に来たんだ…今あの子はいるかい?」
「あ、はい。います!」
「そう…ならば君に案内を頼もうかな?」
「は?」
「駄目かなー…矢張りいきなり押し掛けると云うのは迷惑だろうか」

困ったような顔をして、考える素振りを見せて見る。すると少年はあたふたと視線を泳がせてどうしようかと困り果てていた。痺れを切らすように黒電話の方に背を向けて急いで走る。

「少々。お待ち下さい!」

急いでコールを鳴らし、取ったであろう紅葉にヒソヒソと小声で会話する。菊乃は無理を云ってごめんね?と視線を合わせて、チラチラとこちらを確認する少年に向かい軽く頭を下げて顔の前で拝んだ。

「姐さん。すみません…中也です」
「なんじゃ、中也かえ…今忙しいゆえ話しは後にしよ」
「いえ、とても…重要なお話が」
「……分かった。手短に要件を話せ」
「白雪幹部が、姐さんにお会いしたいとーー…」
「なんじゃと!?それを早う云わんか!」
「えっ」
「今日の仕事は全て止めじゃ、私が菊乃姐さんに会いに行くと伝えよ」
「はい、分かりました!」
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