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それでも…世界を愛そう『文豪ストレイドッグス』

第2章 笑顔が下手な君。


「貴方が今日から私の幹部補佐になる太宰治くんだね、初めまして…白雪菊乃だ。宜しくね?」
「はい、宜しくお願い致します…白雪さん。何卒、教示下さい」
「………君、それは素かい?」

執務室に現れた、まだ若い少年。太宰治の堅苦しく事務的な口調にきょとんと目を丸くする。高級感のあるオフィスチェアを立ち上がるさいギシッと軋むような音を耳にした。黒いコートがバサりと風になびいて揺れる、革靴のピンヒールがコツりコツりと治に近付き見つめた。表情を変える事なく、ただただ全ての世界を諦めたような真っ黒な光のない瞳が菊乃を映す。

「治、少しばかり笑って見せてよ…」
「………それは幹部の命ですか」
「いやーそうでもないさ…ただ疲れない?」

笑うといいよ?笑う門には福来るって云うし、ね?なんてポンポンと治の頭を撫でた菊乃はにっこりと微笑みドアに手をかける。相変わらず無表情の治は菊乃の方へ顔を向けて声を掛けた。

「どこかへ向かうんですか」
「んーそうだねぇ…一緒に来る?」
「!、はい」

いい返事だ、行こうか。そう黒い帽子を深く被りドアを開ければ後ろに控える治と、大勢の部下だった。今日はポートマフィアの仕事で麻薬取引を全て鎮圧すると云うモノだ。部下の女性に書類を受け取り、ボスとその幹部、部下達の顔を全て覚える。パラパラと目だけを通すように歩きながら読み進め、全て頭の中に入ったと直ぐに書類を治に手渡す。少しばかり驚いたように受け取った書類を急いで頭に叩き込むように確認しているのが可愛らしいと小さく笑う。最初は戸惑う事が多いだろう、あの紅葉でさえ初めは菊乃の仕事に付いて行くのがやっとだったからだ。突発的なマフィアの仕事を請け負うのが基本菊乃の仕事だ。並大抵の精神や肉体では出来ない、だからこそ菊乃に認められるのは名誉な事なのだ。誰もが菊乃の部下になりたいとさえ思う。そう…まるで菊乃の存在自体がポートマフィアの高嶺の花だと周りは囁いた。

「君は私の幹部補佐だ。堅苦しいのはなしにしよう。ただ私に振り回されて大変かも知れないが…でもね?」
「はい」
「皆…私の愛する仲間だ。必ず私が皆を守るよ」

後ろを振り返ったさい、今から人を殺すようには思えない優しい笑みで真っ直ぐ治を見つめていた。
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