第6章 平穏な日々に嵐はやってくる~トド松
「え?お金なら鞄の中・・・」
「そうじゃないでしょ?ったく、めんどくさいなぁ!」
そう語尾を強めて言うと、トド松は私の左手を掴み、隣を歩かせる。
こ、これは・・・・手を繋いでいる。
私は今、トド松と手を繋いで歩いている。
「・・・ちょっとナス子姉、手濡れてるんだけど、鼻水でもついたんじゃないの」
「ズビッ・・・そうかも・・・ごめん、離していいよ。ちゃんと歩ける・・・」
「別に、もういいよ。今更離しても遅いし」
私は自分から手を離そうとするが、トド松の手にぐっと力が入り解けない。
酔っててあまり力が入らないというのもあるけど、トド松結構力強い。
「なんかな~、やっぱり男の子なんだな~」
「なに急に」
「別に~羨ましいなぁって思っただけ」
「なにそれ、ワケわかんないんだけど?」
てくてくと夜の帰路を歩きながら、不思議なほどに会話は少ない。
吐く息は白く、後方へ溶けて行く。
顔に当たる風は冷たくて、がびがびになった皮膚には少し痛いけど、トド松が握ってくれてる手がとても暖かいので、あまり気にならない。
家まであと徒歩5分ぐらいという所で、急にトド松が立ち止まる。
「?」