第2章 +君が愛おしい【茅ヶ崎至】
仕事でミスをしてしまい上司に怒られ、気分転換に自分の通っている部署から廊下へと出る。
『ごめんね。いづみ、今日は帰るの俺より早いでしょ?先に帰ってて』
至さんからLIMEが来た。
『至さん、遅いんですか?』
遅くなきゃ先に帰ってて、などとは言わないとわかってはいる。しかし念の為、確認はしておこう
『遅くなると思う。けど、仕事終わったらちゃんといづみの家まで行くから』
最近は二人きりで話せてなかったし、せっかく今日は二人で帰れると思ったのに。
とりあえず既読無視……なんて八つ当たりじみた事をしてしまう。
「茅ヶ崎さんのバカ、」
はぁ……っとため息混じりに独り言を呟く。所詮は私の独り言、彼の耳には届いていないんだろうな。
なんでこう、仕事も恋愛も上手くいかないんだろう。
なんて考えても時間の無駄になるだけだろう
「立花先輩、悩みとか抱え込んじゃダメですよ?相談とか乗りますし」
誰だっけ。名前は思い出せないが同じ部署の後輩男性、というのは覚えている。
「すいません。悩んでたりとかはしてませんから」
いや、悩んではいるけれど。
「抱え込まないでください!それとも、社内で言えないような悩みですか?」
この人と話すのは面倒くさく思える。
「はい、立花さんはこっち」
背後から手首を掴まれ一度驚くも、聞こえた声は至さんの声で安心する。
"今度この子に手ェ出したら許さない"なんてその後輩に言う至さんは怖いというよりも頼もしかった。