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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第11章 嵐の前の騒々しさ




ヒーロー科1-A組の生徒たちが入学してから、数日が経過した。
その日の昼休みのチャイムが鳴ると同時に、待ってましたと言わんばかりの勢いで向に話しかけて来たのは、爆豪とは反対側の隣の席に座る上鳴だ。


「深晴、お前今日ずっと眠そうだなー」
『…ちょっと昨日寝れなくて』


授業中でも休み時間中でも関係なく、ガクガクと船を漕ぎ続けていた向に、彼は気づいていたらしい。
今日の午後は3回目のヒーロー基礎学が予定されており、開始10分前には教室へ集合しているように、という指示が相澤から下っている。
なのですぐに食堂へ行き、昼食をとらなくてはいけないのだが、向は机に突っ伏し、寝る姿勢を取り始めた。


「おいコラ、何ブッ倒れてやがんだ」
『いて』


そんな彼女の睡眠を妨害しようと、爆豪が自分の財布で向の頭をパンッ、と叩いた。


『…ここは私に任せて先へ行け…』
「アホか、グズグズしてんじゃねぇ殺すぞ」
「寝れなかったって何してたん?」
『…映画…見ようとして…途中で寝たから、そのままぼんやりしてた』
「「寝てたんじゃねぇか」」


パンッとためらいなくもう一度爆豪のツッコミが頭頂部に入り、向は少しだけイラ…ッとした顔をした。


『ちーがうって、ぼんやりしてたのは私の方で、途中で寝たのは……』
「…寝たのは?」
『……寝たのは…まぁ…別の人』


言葉を濁し、少しうつむきながら、向は呟いた。
その様子を見ていた爆豪と上鳴は顔を見合わせ、上鳴はショックを受けたように「誰!?」と聞き返し、爆豪は「誰だそいつ!?」と怒鳴り散らした。


『いや、いやいやいや…誰でもないよ、家族家族』
「なんで家族で照れんだ気色悪ィな、本当のこと言え殺すぞ!!!」
『照れてねーし、本当のことだし』
「マジで家族なん?じゃあなんで照れんの?」
『いや照れてねーし』
「「照れてんだろ!!」」


絶叫する上鳴と、怒号を飛ばす爆豪に囲まれては眠れないと察したのか、向は財布を持って、席を立った。
そして、その場の状況に対して、ため息を吐いたのだが、上鳴はそれを見て「恋する乙女のため息だ!」なんて余計なことを叫んだ。



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