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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第5章 菊合






自分や家族の容姿が周囲と違うことに気がついたのは、三歳の秋だった。

屋敷の使用人や、乳母、近所の子ども達は皆、金色かブルネットの髪をしていた。
鼻が高く、瞳の色は青や緑のガラス玉のよう。

だけど私と両親は黒い髪、黒い瞳をしている。

父にある日、問いかけてみた。


“なぜ、お父さまとお母さまと八重は黒い髪と黒い目なの? なぜ、みんなとはちがう言葉を話すの?”


すると父は読んでいた書物を机に置き、私に手招きをした。
トコトコと駆け寄った私を抱き上げると、膝の上に座らせてニコリと微笑む。


“それはね、私達が日本人だからだよ”

“にっぽんじん? Marthaも?”

“乳母のマーサはBritish───英吉利人だ”

“いぎりすじん・・・にっぽんじんとはちがうの?”


父は“ああ、違う”と言って、輪郭をなぞるように私の顔を優しく撫でた。
その瞳はどこか寂しげで、私の黒い瞳越しに遠い故郷の風景を思い出していたのかもしれない。


“八重のこの小さくて可愛い体には、お姫様の血が流れているんだよ”


お姫様と聞いて、私は童話に出てくるプリンセスを思い浮かべて喜んだ。
日本人のことは分からないけれど、Marthaが読み聞かせてくれる絵本と同じお姫様の血が自分に流れているのなら、いつか父のような素敵な王子様に出会えるのかもしれない、そう思った。


“八重はきっと素晴らしいレディになるから、王子様にも巡り合えるだろう。でも今は私の・・・私だけのお姫様だ”

“お父さま、大好き!”


キスをしてくれた父は、子どもの目から見て王子様のような人だった。
優しくて、強くて、娘を本当に愛してくれていた。

でもあの時の父は教えてくれなかった。

“お姫様の血”とは、王子様と出会うためのものなんかではない。


運命の歯車を狂わせた代償となるべく血であることを───











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