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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第7章 冬の蝶




ドアの向こうから光太郎の明るい声に混じって、クスクスという女性の笑い声。
姉の京香のものではない、しかし覚えのあるその声に赤葦の眉間に深いシワが刻まれた。

「旦那様、赤葦です」

ノックをすると、特に慌てた様子もなく“おう、入れ!”といつものように返事が返ってくる。
ゆっくりとドアを開けたその先の光景に、赤葦は全身の血が引いていく感覚を覚えた。

「赤葦、おはよ!」

パチパチと燃える暖炉の火。
その前で上半身裸になった光太郎と向き合いながら胸板を手ぬぐいで拭いていたのは八重だった。

「何を・・・なさってるんです」
「なにって、朝の鍛錬で汗をかいたから八重に拭いてもらっていたんだ」

八重の手が光太郎の肌に直接触れている、その光景を映した赤葦の瞳の色が変わる。二人に気づかれないように、と取り繕う余裕は無かった。
つかつかと早足で二人に近づくと、八重の手から手ぬぐいを奪い取り冷やかな視線を落とす。

「これから牛島家に嫁ごうという御令嬢が、お身内と言えど若利様以外の男性の肌に触れるなどあってはなりません」
「・・・・・・・・・・・・」

すると八重は光太郎から離れるように一歩下がり、負けじと赤葦を睨みつけた。


ああ、言いたいことは分かる。
“私を辱めたくせによく言えたものだ”と思っているのだろう。


「何か言いたげですね、八重様。今日は随分と体調が戻られたご様子、二日間お休みしていた稽古事もこなせそうですね」
「赤葦・・・」

光太郎の肌には触れていられた八重だが、手ぬぐいを取り上げる際に軽く当たってしまった赤葦の肌にはかなりの嫌悪感を抱いているようだ。
二人の間に流れる重い空気を悟ったのか、光太郎が明るい声を出した。




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