• テキストサイズ

【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第3章 秋霖 ②




「ボックン家の馬車が停まっていたから、君に会えるんじゃないかって正門から来て正解だったヨ」
「・・・?」

随分と身長が高い・・・おそらく光太郎と同じか、それ以上。
少し背中を屈めながら、大きく開いた目で遠慮なくジーッと見てくるくせに、なかなか自分の名前を名乗ろうとしない。

「英国から来た木兎八重ちゃんでしょ」

なんだ、この無礼な男は・・・と八重の眉間にシワが寄る。

「あれ、もしかして日本語が分からない? 英語の方がいいのかな?」
「ご心配には及びません、日本語は分かります」

我が物顔で牛島家の敷居をまたいできたが、若利ではないだろう。
定子の息子にしては品格を感じられない。

「それより、貴方も名乗ったらいかがでしょうか?」

すると学生帽の男はヘラヘラとしながら、“あ、ゴメン”と肩をすくめた。

「俺は天童覚。以後、お見知りおきを」

・・・天童?
聞いたことがない名だが、牛島家に出入りしているという事は縁者だろうか。

「ううん、違う。若利君の家にイソーローしてるだけ」

その瞬間、背筋をすり上がるような悪寒が走った。
今・・・自分は頭によぎった疑問を言葉にまではしていなかったはず。
それなのに彼は八重の言いたい事を悟ったかのように返事をした。

「そんなに警戒しないでヨ。別に獲って食ったりはしないからさ」

瞳孔の小さいその目はまるで蛇のよう。
相手の考えていることは手中に落とすが、自分の腹のうちは絶対に悟らせない・・・そういう怖さがあった。

闇路を・・・呼んだ方がいいだろうか。
いや、それよりも聞きたいことがある。

「さっきの歌・・・クックロビンの歌を知っているの?」

鼻唄程度だったものの、あの発音は英語を母国語とする者のそれに近かった。
見たところ学生のようだが、留学経験があるのだろうか。






/ 287ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp