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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第3章 秋霖 ②




昨夜の夕食でも思ったことだが、光太郎は言動こそ豪快だがテーブルマナーは完璧だった。
並べられたフォークやナイフを迷いなく使い、日本人特有の咀嚼音も出さない。

「八重、昨日はちゃんと眠れたか?」
「実はあまり・・・」
「なら、今日はゆっくりしてろよ」

京香が言っていた通り、食卓に並べられているのはベーコン、フライドエッグ、ベークドビーンズ、ハッシュドポテト、そして細く切ったトーストといった英国式の朝食。

「しかし、英国人は朝から脂っこいものを食うんだな」
「普段は違うのですか?」
「うん、普段は米と味噌汁! 赤葦もそっちの方が好きだよな」

赤葦は“なぜそこで私の名前を出すのですか”と言いたげに眉をひそめているが、実際に口に出さないところを見るとあながち嘘ではないのだろう。

「ところでこれはどーやって食うの?」

光太郎はエッグスタンドに乗せられた半熟卵を、不思議そうに見ていた。
さすがにこれは初めて目にするのかもしれない。

「スプーンの裏でてっぺんだけ割るんですよ」
「割る?」
「はい。そしてパンを浸して食べるんです」
「面倒臭いことをするんだな」

ムムムと難しい顔をしながらスプーンでコチコチと卵の殻を割ろうとしていたが、やはり億劫になったのだろう。
使用人に小さな椀を持ってこさせると、そこに割り入れてゴクンと丸飲みしてしまった。

「これが俺の食い方だ」

テーブルマナーは完璧なくせに、ためらいなくそれを崩してしまう。
それでさらに周囲を明るくさせる彼を、どうして咎めることができようか。

「ならば私も」

八重も同じように女中に椀を頼むと、その中に半熟卵を出して光太郎がしたように口をつけて飲み干した。

「光太郎さんの御作法、ぜひとも教えていただきたく思います」

ニコリと笑えば、光太郎は嬉しそうに顔を輝かせる。
生まれてから今まで一度も顔を合わせたことのない二人だが、一つ言葉を交わすたびに互いの距離が縮まっていくようだ。

するとそれまで黙々と食べていた赤葦が、冷めた口調で二人の会話を遮った。






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