第11章 私とパンダと空のむこう
よく晴れたある日、私はボストンバッグを膝に乗せて、空港の搭乗待合室の椅子に座っていた。
預けるような荷物はなかったので、手続きは思ったより楽だった。あとはもう飛行機に乗るばかり。
パスポートを何度も開いたり閉じたりした。初めての海外だ。
今だからこそ分かるんだけど、伊豆くんが中国へ帰ると決めたあの日、私は本当は、彼について行きたかったんだろう。
色んなものを脱ぎ捨てて、一緒に飛び出したかったんだろう。
でもそれを言い出せなかったし、伊豆くんにも声をかけてもらえなかった。
まあ、伊豆くんとしては、自分で稼いで自立できると分かるまでは私を誘うわけにいかなかったのだろう。彼の手紙を読んでやっとそれが分かった。
今はもう、伊豆くんは一定の自信を得たらしい。
けれど私はどうだろうか。黒白人の村とやらでやって行けるだろうか。
相変わらず種族は違うし、中国語はわからない、仕事はできるか、村に馴染めるか、彼の両親にどう思われるか、色々、色々。
…ダメだダメだ、どうかするとすぐ悪い風に考えてしまう。