第1章 1.
────見知らぬ土地にやってきました。
………いや、嘘。
見知らぬ土地に、現在進行形で落ちて行っている最中です。
兎みたいな人を追いかけていたはずなのに、公園にいたはずなのに、なぜ私は上空に?
「……ちょ、待とうよ。流石に錬金術師でもさ、無理なことってあるよね?」
異様に遅かった落下速度は、何故か突然勢いをつけた。
下を見れば、黒々とした深い森、それに抱かれるように広がる円形の街、ロンドン塔より高くそびえる奇怪な塔。
…本当にどこだよ。
突然、身体に重みが戻り、落下速度が一気に増す。
「…私の人生もここでおしまいですか……」
地面に激突したときのことを考えてしまい、ぎゅっと目をつむった。
次の瞬間___
「危ねえ!!」
私は誰かに抱きとめられる感覚がした。
恐る恐る目を開けてみると……
「空から降ってくるなんて……お前、何者?
どっからここに入りこんだ?」
見知らぬ男がいた。