第2章 ‐case1‐ending.
‐黒尾side‐
逃げたがりの甘えん坊卒業、だな。
コイツが、こんなに強い意思を持った眼で見詰め返してくるなんて、思ってなかったのが本音。
照れてる顔が見られないのは残念だが、結果オーライか。
少し顔を離す。
その途端、挙動不審になる姿が、小動物に見えた。
さっきまでの、強気に、はっきり伝えてきたのは、なんだったんだか。
「ぶっ!なんだよ、そのテンパり具合は。」
つい吹き出して、突っ込みを入れる。
ただ、小熊は俺との状況でアワアワしてた訳じゃ無かったらしく。
俺の後ろを指差していた。
そっちに目を向ける。
1つ後のゴンドラに乗ったカップルがキスしてた。
「…俺等もしとくか?」
こう言えば、今度こそ照れるだろうと思って振り返る。
顔を真っ赤にして、完全にそっぽ向きやがった。
そんな事をされたら、どうしても触れたくなる。
「ファーストキスが観覧車の中で、とか。ロマンチックで良くね?」
小熊の頬に手を当てて、強制的にこっちを向かせた。
何故か、申し訳なさそうに眉を垂れている。
「非常に言いにくいのですが…。」
「…ん?」
「ファーストキスは、京ちゃんとしちゃってます。小さい頃の写真に、あったので…。」
「それは、ノーカウントにしとけ。物心付いてから、好き合った相手とすんのがファーストキスで良いだろ?」
その表情の意味を語った、聞きたくねぇ情報が入ってきた。