第1章 2月14日
「だって...だって、バレンタインデーだったから...。
バレンタインデーは女の子が好きな男の子にプレゼントを贈ることが出来る唯一の機会だから。
やっぱり、星夜さんには受け取って欲しくて...」
涙が溢れる。
1度溢れてしまった涙は、そう簡単には止まらない。
「チッ...なら、そう言えば良いだろ。
俺相手に我慢なんかすんなよ、バカが!」
荒々しくそう言うと、星夜さんは私の食べかけのチョコレートを奪った。
「食う」
「え、でも甘いもの苦手なんじゃ...」
「美織にそんな顔されたら、食うしかねェだろ。
それに、好きな奴にあげる日なら、烈にあげんな。
俺だけにしろよ。
じゃねェと.....妬くだろ、俺が」
ぶっきらぼうにそう告げると、チョコレートを頬張った。
甘いものが苦手な筈なのに、ちゃんと食べてくれてる。
私の為に...。
その事実に胸が暖かくなる。
やっぱり私は、この人のことが好きなんだ、と。