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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第2章 【桜色】先天性世話焼き


~Side轟~


手の平で雪は溶けども水滴は残る。

母の夢だったとは覚えていても、何を話していたかまでは思い出せない。夢の詳細は露と消え、もどかしい感情だけを握ったまま意識が浮上した。


(お母さんの夢だった気がするが…。)


たまにあることだ。
どうせすぐこの感情も消えてしまうだろうと気にも留めず時計を見れば、もういい時間。

用意を済ませキッチンへと向かうと
居るはずの姉は見当たらず、代わりに一番顔を合わせたくない奴が待ち構えるように立っていた。


「焦凍。
高校に上がるにあたって話がある、来い。」


親父が自己中心的なのは今に始まった事じゃねぇ。

でもだからと言って
このタイミングは有り得ねぇ。

今日から通う国立雄英高等学校は親父の母校でもある。
今日が何の日かアイツが知らない訳がない。

入学初日の朝っぱらから
どれ程の話かと振り返ってみりゃ、もう居ないときた。

シカトしようかとも思ったが流石にこのタイミング
余程の事かと思って、恐らく居るであろう訓練場へと向かう。


「来たか。」

「時間がねぇ、手短に頼む。」


温度のない会話は今に始まった事じゃねぇ
だから長々と話すのは時間の無駄
そう思えた。

俺の態度に対して、親父は特に不満を出すでもなく口を開く。


「お前ももう高校生だ。
それも雄英ヒーロー科。これから、出会いはいくらでもあるだろう。」


最初は
珍しく親らしいことを……
なんて思った

母親を強制的に病院へぶち込んだこいつの言葉は、俺にとってエゴイストのソレ以外の何物でも無かっただけに






だが、一瞬でもそう思った俺が馬鹿だった。







「どの縁がどう転ぶかは本人とてわからん。
友人、特に恋人は慎重に選べ。」

「……要するに何だ?」

「……………。」


答える気配はねぇが、聞くまでもねぇ。
「相手」を“個性”で選べ
そう言いてぇ訳だ。


「てめェの思惑なんざ知るか。」


これ以上何も話す必要はねぇ
意味もねぇ。


(時間を無駄にした。)


結局
そう結論付けて朝食も食べずに家を出た。



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