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砂漠の月

第2章 砂漠の月71~150


71

俺にもこんな幸せが来るなんて思いもよらなかった。
思えば今まで市しか眼中に無かったものだから、経験無さすぎだろ。
いや。側室は居た。正室は居なかったけど。

自分の部屋に月子を招いて、ぎゅうぎゅうと包む様に抱き締める
すうっと深呼吸すると抱き締めてる月子の甘い匂いがして、あー、幸せかも、今。

「は、はる、ひささん」
「んー?」

名を呼ばれ、月子の顔を覗くと真っ赤になっていて
照れてる?そう呟けばこくこくと頷かれた。

額から頬、唇へと口づけを落とすと素直に瞼を閉じて、触れる。

唇が離れ、月子の頭を撫で、何だか気恥ずかしくて
クスクスとお互い顔を赤くして笑う。

のんびりと俺の部屋で過ごし、夕食は月子が作ってくれたので一緒に食べ
インターホンが鳴って首を傾げてたら

「あれ、元就?」
「この馬鹿晴久!」

強烈なデコピンにぬおおお、っと食卓に伏した。

「貴様が相手故、心配はない。だが食事をして帰るのであれば一言メールを入れるがよい!」
「あ、ごめんなさい!兄さん」
「月子は良い、今日は楽しめたか」
「はい!とっても」

晴久を足蹴にしつつ月子の頭を撫でるその兄馬鹿っぷりに
政久と経久は驚いて元就の顔を見る

「本物の元就か?」
「我以外誰が居る」

まあ、そりゃそうだな。
食事を再開した父と祖父を見て、俺の味方は居なかった、と晴久は沈んでいった。




「え、晴久。月子ちゃんとデートしたの?いいなぁ」

私もどこか行きたい、と学校に着くなり市はぶー垂れた。
お前、相手が元就だと言う事自覚してるのか?

「市は行きたいとこあんのか?」
「動物もふもふしたい。猫カフェ」
「猫カフェがデート先かよ」
「動物園でもいい」
「どっちにしろ動物か、好きだなお前」
「動物園はふれあい広場があるからね!」
「結局もふもふしたいだけか」

市に気付かれず元就がスマホで検索してるから、その願いは聞き入れられるんだろうな。
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