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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い



 チビ太さんはさらにうなずき、

「オイラには、そいつが嬢ちゃんを遠ざけてる理由が、ぃよーく分かるぜ」
「な、何ですか!?」

 思わず膝を詰めて聞いてしまう。

「嬢ちゃんが高嶺(たかね)の花すぎて、気後れしちまってるんでい!」
「ああ、なるほど!!」

 合点がいき、膝を叩く。

「シェー!? そこ『なるほど!!』って同意するところざんすかっ!?」

 近くの茂みからツッコミが入った気もしたが、スルーする。
 私の同意を得て、チビ太さんはますます得意そうに、

「まあ、そのクズにも一つ良いところがあるとしたら、身の程をわきまえてるってとこだな。
 自分が地の底を這いずり回る虫だと理解してっから、強気にゃ出られねえのさ」

「聞けば聞くほど、パズルのピースがハマっていく思いです!!」

 茂みからなおも『シェー!?』という叫びが聞こえるが、真っ昼間から幻聴か。

「だろお!? だがな。決して同情はしちゃいけねえ。
 情があるから辛いと感じるだけでい。ダメ男はキッパリ捨てて、自分の人生を生きるんだな!!」

 とチビ太さんがキメたところで、ジリリリと、ベルが鳴った。 
 すると茂みからイヤミ社長が出てきて、揉(も)み手ながらに、

「はい~、お時間ざんす!! 楽しいおしゃべりだったざんすか?
 もっとおしゃべりしたいのなら、今なら特別料金!
 延長一時間五千円ざんすよ!?」

 そう言われてチビ太さんは迷う顔になったが、

「うーん……延長してえんだが、仕事があるからなあ。今日はよしとくぜ」

 と言ってイヤミ社長にお札を何枚か払う。そしてチビ太さんは私に、
「じゃあ、またな」
 私もアフターサービスは欠かさない。とびきりの笑顔で、

「とっても楽しかったです、チビ太お兄ちゃん!
 あと、せっかくのおしゃべりコースなのに、私ばかり愚痴っちゃってごめんなさい。
 お兄ちゃんがあんまり頼れる人だったから、つい甘えちゃって」

 私がそう言うと、チビ太さんはみるみる相好(そうごう)を崩し、デレデレと、

「よせやい。オイラは一人っ子だから、自分で何でもやる癖がついててな!
オイラで良かったら、可愛い妹のためにいつでも相談に乗ってやるぜ!」

 そして手を振り去って行くチビ太さん。

「ありがとう、チビ太お兄ちゃん!! また利用下さいね~!」

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