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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い


 …………

 こんなもの、借りるんじゃ無かった。
 部屋で、私はただ冷や汗を流す。

「うわあ懐かしいなあ!」

 どういう勘がはたらいたのか、こんなときに限って、六つ子は六人そろって私の部屋に遊びに来た。
 むろん、彼らは自分たちの写真に食いついた。
 震えながらページをめくる私の背後で、六人のお兄さんたちは楽しそう。

「あの頃は良かったよ。学校が終わったら皆で毎日原っぱで遊んだよなあ!!」
「イヤミやチビ太は全然変わらないよなあ」

 何で路面電車が走ってる。下駄をはいてる子なんて今どき見かけないぞ。
 女の子がことごとくおかっぱ、男の子に坊主頭が多いのもどうなの。
 だがその風景の中に、六つ子が間違いなく混じっている。

「今も毎日遊んでるようなもんだろ」

 一松さん、肩に肘を置いて体重をかけてこないで下さい。
 そして私の耳元でボソッと、

「どれが俺か分かる?」
 分かるかっ!! 双子三つ子を完璧に見分ける、ギャルゲー主人公的要素なんて期待しないで下さい!

「あのときは、仕事とか就職とか何も考えなくて良かったよねえ」
 さらにページをめくれば、六つ子が銭湯の中で笑ってる写真。トド松さんが、

「松奈ちゃんは銭湯とか行ったことある? 今度一緒に行こうよ!」

 ……風呂上がりの六つ子と一緒に、入浴料という余計な貼り紙が映り込んでいる。
『大人23円 子供8円 婦人洗髪料10円』って。
 ぜ、ゼロを入れ忘れてるだけですよね?婦人洗髪料って何なの。

「で、誰が誰なんです!?」

 地雷原に再突入するのは必至だったので、話を切り替えることにした。
 どれだけ目を皿のようにして見ても、どの子が一松さんか分からん。

『さあ?』

 六人の声がそろった。やっぱりですか。

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