• テキストサイズ

【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い



「な……っ!?」
 でも、現に私の私物は引き払われている。
「謝礼金に十万くらいは置いといたけど、母さんと父さんはかなり落ち込んでた。
 皆もお別れパーティーくらいって、へこんでたけどね。
 でも誰も疑ってはいなかったよ」

 待て。私、どのくらい寝ていたの?

「その謝礼金とかはどうやって用意を? 私を監禁するのに必要なお金とかも……」

 彼がいかに猫の王であろうと、お金だけはどうにもならないはず。

「まあ三百万あれば、色々出来るよね」

「えええっ!? 三百万って、まさか宝くじのお金を!?」
「…………」
 目を丸くする。あの宝くじは一松さんがびりびりに破いたのでは。
「……て、破いたの、フェイクだったんですか!?」
「そういうこと」

 うん。もう言い訳出来ない本物のDVだ。

「ひどいですよ!! 私が当てたお金なのに!!」
「だから、松奈のために使ってるでしょ」
「納得出来ますかっ!! あと、アレとかコレとかどうやって調達したんですか」
「ネットがあんなに便利だと知らなかった」
「犯罪行為のためネットデビュー!?」
 
 ダメだ。今回はいくら突っ込んでもツッコミきれない。
 気力を失いかけていると、キスをされた。
 私の下着に手をかけながら、一松さんが言う。

「一ヶ月したら解放するから。全部、心配いらないから」

「無理! ドン引き!! 好感度が地に落ちましたっ!!」

「好感……? よく分からないけど別にいいよ。これ以上嫌われても怖くない」

 落ち着け。落ち着け、私。
 相手は一人で、現在進行形でつきあってる人。
 上手く懐柔すればさっさと脱出出来るはず。

 そして一松さんに愛撫される。

「てか手錠する必要はないでしょう。手首痛いし、もうすれてるし!」
「後で薬をぬってあげるから」
「答えがズレている!!」

 一松さんは、安心したように笑う。

「松奈って変わってるよね。もっと罵倒されたり、暴れられたりすると思ってた」

 変わってない。状況が異常すぎて、どう対処すればいいか分からないだけ。

「松奈……」

 抱きしめられる。もう一度深いキス。

 雨の音がうるさい。

 うるさい、うるさい、うるさい!!

 うるさすぎて、頭がおかしくなりそうだ。


 そんな感じで、三ヶ月目が始まったのであった。


/ 422ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp