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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い



 イヤミ社長は嫌そうに、ちゃぶ台に番茶を出してくれた。

「いただきます。いやあ、ご立派な新居で」
 ちゃんと、ごあいさつしたつもりだったのだが、
「お金なら貸さないざんすよ。仕事もないざんすよ! チミと組む気はないざんすよ!!」
「ひどい!! 迫害されている可憐な少女に、そんな血も涙もないことを仰るだなんて!!」
「いちいちツッコミを入れるほど、ミーは親切じゃないざんすよ」

 くそっ、最近のツッコミ役は冷酷非情だ。

 …………

 私がイヤミ社長の家を訪問したのは偶然である。
 あのろくでなしの六つ子は、たいてい昼前か昼過ぎに起きてくる。
 なので朝から一人で家事をし、散歩をしてたら河川敷に来た。
 そしたらイヤミ社長の段ボールハウスが、プレハブハウスに進化していたのである。

「つまりプレハブを購入できるだけの金――資金源があったってことですよね?」

 よって礼儀正しく新居のお祝いをさせていただくことにした。

 三百万を貯める夢は諦めちゃいない。拾った宝くじだって神棚に飾ってあるし!

 するとイヤミ社長は

「おフランス帰りのミーは商才があるざんす。ミーがちょっと本気になれば、我が家なんてちょちょいのちょいざんすよ!」
 いや河川敷にプレハブって時点で撤去対象だろう。
 
「そのノウハウをぜひお聞かせ願えれば!!」
 イヤミ社長の胸ぐらをつかんで懇願するが、
「ダメダメダメダメざんすよ!!」
「イヤミ社長~」
「ダメったらダメざんす!!」
 と、しばらく押し問答が続き、ついに――。


【ルート分岐点――松野一松ルート】
 

 ……ん? 何だ、今の表示。

「どうしたざんすか?」
「あ、いえ……」

 白昼夢かな。まあいいか。

 私たちは薄暗い階段を下りていく。

 ここは繁華街の一角にある地下ライブハウス。

 階段の先は小さなライブ会場に続いている。
 ここで、メジャーを夢見る多くのアイドルがライブ活動を頑張っているのだ。

 イヤミ社長は最近ちょっと羽振りがいいらしい。
 そのおこぼれに預かろうと……もとい、お仕事をお手伝いしようと、私はイヤミ社長についてきた。

「地下アイドルのプロデューサーって儲かるもんなんですか?」

「何とか利益は出てるざんすよ。熱心なカモ……ファンが金を落としてるざんすからね」

 言い直した。言い直した!!

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