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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い


 でも一松さんもうんうんとうなずくあたり――滝つぼに蹴り落としたくなるが――恋愛対象というより、アイドルへの憧れに近いものらしい。

 ……そう自分を納得させておかないと、この場でタコ殴りにしてしまいそうだ。

「昨日なら良かったんだけどね。やっぱり来る?」
 ボソリと呟くあたり、まだ怒りが残ってる気もするが。
「いえ、やることがありますんで」
 遠慮しておいた。幼なじみ同士の楽しい空間に、割って入るのも悪い気がしたし。


 一松さんと十四松さんは玄関まで見送りに来てくれた。
「じゃ、バイト探し、頑張って。危ないことは絶対にするなよ」
「頑張ってね、松奈ー!!」
 まだバイト探しと勘違いされてるのかな。まあいいか。
「俺たちは夕飯には戻る。それとも皆で食べに行く?」
 今日はお母様もお父様も夜遅い。私が夕飯担当だ。
「いいえ! 節約しましょう。ちゃんと作りますから。
 皆さん、帰りに飲んできちゃダメですよ。いってきまーす!」

 と手を振って出ようとすると、廊下のふすまがそろーっと開き、陰鬱な表情のD○四人が顔をのぞかせた。

「お見送りとは仲がいいねえ、昨晩はお楽しみだった一松くぅん」
 お顔を半分だけ出してるおそ松さん。昨晩? 何かあったんですか?

「さっきはずいぶんと賑やかだったけど、何かしてた? 十四松」
 同じくお顔を半分出しているチョロ松さん。

「十四松、説明してやれよ」
 一松さんに肘でつつかれた純真な十四松さん。
「うん!!」
 彼は余りぎみのソデを振り上げ元気よく、私たちが健全に会話していたと――。

「一松兄さんが松奈を足蹴にして、松奈は後ろから攻められて喜んでたよー!!」

 ……。

 戦場と化した松野家を後に、私は道を急いだ。

 十四松さん……コントからハブられた恨みじゃなかろうな。
 私はそそくさと、研究所への道を急いだ。

 …………

 …………

 研究所で、軍手をして散乱した物を片付ける。
 
「はあ……まだまだですねえ。もう、これじゃあバイト探しの暇もないし」
 てか、一松さんとのコントで、自分のお昼ご飯を忘れてた。
 コンビニでお菓子でも買ってくれば良かった――って、お金ないし。
 器材を段ボールに戻しながらため息。

「私、何やってるんだろう」

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