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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い



「松奈も飲みに行こうよ。お金がない? 大丈夫、おごるからさ」
 と、チョロ松さん。まあ実際にお金はありませんが……。

「嫌ですよ。酔っ払うと、皆、絡んでくるし下ネタ言ってくるし!!」
「まあまあそう言わずに。長男の俺が抑えるからさー」
 あなたが真っ先に絡んでくるでしょう!!

 一松さん? 負けたのか、興味なさそうにポケットに手を突っ込んでる。
 頼りにならないなあ。
「よし、じゃあ七人で飲みに行くぞー!!」
『おー!!』
「いえ私、帰るって……」
「行こう、松奈!!」
「歩いて歩いて」
 十四松さんと一松さんに引きずられる、哀れな妹であった。
「誰かー」
 酔いつぶれたって、絶対におんぶしませんからね!!

 …………

 揺れている感じがする。
 頭がふわふわして、筋肉痛で、眠い眠い。
 どうも体勢が不安定で、つかまれるものにギュッとつかまる。
 この感じ、ずいぶん懐かしい。
 そうだ、誰かに、おんぶされているような……。

 夢うつつの中、声が聞こえる。

「どうしたんだろうね、寝ちゃうくらい疲れてるとか」
 ちょっと飲んだ感じのおそ松さんの声。
「一松、やりまくってないで少しは休ませてあげろよ。外は辛いぞ」
「はあ!? やってねえよ!!」
 怒鳴ってる一松さん。うっさい……。
「野球かな! 野球をやってきたのかな!?」
「そんなわけないでしょ。廃品回収とかしてるんじゃないの?
 気をつけてあげてる? 一松兄さん」

「み、見てるよ。今日はちょっと目を離したけど……」
 一松さんめ。完全に舐めプに入りやがった。帰るったら帰るの!!
「こういう子猫ちゃんは目を離すと何をするか分からないぞ。ちゃんと見て――」
「うるせえな、クソ松っ!!」
 もう、大声出さないで下さいよ。眠いのに。

「松奈に何かあったらおまえの責任だからな、一松」
 とチョロ松さんの冷たい声。

「何で俺が……」
「おまえが非D○だからだよ!!」
 そこは彼氏とか、恋人という単語が入るところでは。
 あと夜道で大声で言わないで。そこで、まあまあとおそ松さんが、

「俺も危なっかしい子だと思う。見ていてあげなよ、一松」

「……分かってるよ」

 危なっかしいとは失礼な。
 でもそれきり、私はすやすやと眠ってしまった。

 明日も家事と片付けとアルバイトだ。

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